正常な噛み合わせは、上顎の前歯が下顎の前歯を覆っています。反対咬合とはそれが逆に噛み合っている状態をいいます。
その反対咬合には歯槽性のものと骨格性のものがあり、骨格性の要素が強くなればなるほど、通常の矯正治療だけでは治療が難しく、顎の骨を切断する「骨切り」と呼ばれる外科的処置を併用した矯正治療が必要となります。患者様からしてみると、普通の矯正治療で治せるだろうと考えていたら、まさかの骨切りを勧められ、怖いし、痛そうだし、入院が必要と言われたし、どうしていいか分からず、先に進めなくなって矯正治療を断念してしまうことも少なくありません。
そこで今回は、骨格性要素が強い反対咬合でも骨切りをすることなく治すことができた症例をご紹介します。
反対咬合とは下顎骨の過成長が原因で起こり、その臼歯における咬合状態をクラスⅢと呼びます。正常な咬合はクラスIです。クラスⅢからクラスIにまで、しっかりと臼歯関係を是正することができれば、骨切りをしなくてもよいのです。
今回の患者様はシビアなクラスⅢを呈していましたが、15歳と若いため臼歯へのアプローチが十分に行える年齢です。そこで3ヶ月間、カリエールを使用してもらいました。そうすると約5㎜の下顎臼歯部の遠心移動が行え、さらに前歯も動いて反対咬合自体が改善されてきました。そこからワイヤー矯正に切り替えて歯列全体のアーチコーディネートをおこない、完全なるクラスIに是正することができました。
治療開始から26ヶ月間かけて、シビアな反対咬合を臼歯部からしっかり治すことが出来ました。カリエールを効果的に活用できたことが成功の秘訣です。