INTERVIEW No.833
一色(いっしき)株式会社
代表取締役 一色 浩徳 さん(46)
糸のイッシキ、創立65年
祖父が昭和34年(1959年)に、繊維ビル(今のアイネスフクヤマ)内で一色商会を立ち上げ、衣料品の小売を始めました。15年後に法人化し、アパレル縫製副資材の仲卸問屋へと業態を変更し、地域の繊維産業とともに歩んできました。
その間、本社の場所は引野町を経て、縫製業が盛んな新市町へと移っています。5階建の社屋の水色は、建設した昭和60年代にご注文が多かった、グンゼスパン糸の662を再現した色です。
在庫力を強みに
縫製副資材にも様々あり、平ゴムや裁断関連の紙、ファスナーなどもありますが、当社が最も強いのは工業用ミシン糸です。仕入先はグンゼをはじめ6〜7社あり、本社ビルの2階から上に、常時レギュラーだけで400色以上、10万本以上の在庫を管理しています。ブームの色や季節の色は、前もって在庫を〝積む〟ようにして備えます。
糸の流通は代理店制度のため、メーカーと縫製業者の間に入る取次店の役割をする私たちは、この在庫力が強み。メーカーが品切れ、廃番のときも頼られるような品揃えは、自称西日本一です。
問われる提案力
しかし、どんな糸をどれだけ持っていても、縫製する商品に合わせた提案ができなければ〝糸のプロ〟とは言えません。「この色の、この布を、この服にしようと思うので、どの糸を使えばいい?」という相談に対応できなければ。
ぴったりの色を選べば良い?確かにピンク1つでも何十種類もありますが、ストレッチ対応、光沢、水溶性、目飛びしにくい、熱で収縮する、反射、蓄光…機能性の違いがあり、さらにそれぞれに番手と呼ばれる太さの違いもあります。相手のニーズを聞いてどれだけ、自分の〝ひきだし〟を開けられるか。それは、経験とカン、データを兼ね備えるしかないのです。それだけに、お客様が困っていることを、糸で解決して喜んでもらえることがやりがいです。
また、最近は趣味でミシンをされる方への小売もクチコミで広がり、喜ばれています。
糸を主軸に新展開も視野
国内での縫製=メイドインジャパンは全体の2%ほどと言われるなかで、ワーキングウェアや婦人のハイテンションパンツが強い備後において、どれだけニーズに応えていけるか。地場に根ざして卸し、西日本をはじめ全国からのご注文にも対応していこうと、広報紙の発行やSNS発信も始めました。「とりあえず一色に聞いてみよう」、「さすが一色だね」。そんなファーストコールカンパニーを目指していきます。
「餅は餅屋」という諺がありますよね。当社も糸に特化した糸商として、在庫力と提案力の〝幹〟をぶらすことなく太らせ、時流に乗り地域に寄り添うような新しい〝枝〟も作っていく考えです。
■ PROFILE
1977年生まれ。福山市出身。一色3代目として幼少期から糸を中心とする縫製資材に触れ、カナダに留学後、他社で営業職を経験して一色に合流。一昨年10月、代表に就任
■ SHOP DATA
一色(いっしき)株式会社
広島県福山市新市町戸手750-4
TEL:0847-52-3520
https://www.isshiki.ne.jp/
インスタグラム @ito_no_isshiki