ー お寺をもっと身近な居場所にー 伝統を守りながら新風を吹き込む

INTERVIEWEE
備後長久山 妙政寺(びんごちょうきゅうざん みょうしょうじ)
副住職 宇根 海慎 さん(24)

自ら選んだ僧侶という職業

福山藩2代目藩主・水野勝俊公と正室の菩提寺として知られる妙政寺。1573年に創建され、水野藩とともに刈谷(愛知県)から引っ越してきた長い歴史を持つ。副住職の海慎さんは、現住職・二九世の海静さんの長男で、幼名は慎之助。福山市立中高から立正大学へと進んだ19歳の時、代々の「海」の字を入れて改名した。
「寺の敷地内にある庫裏に住み、毎朝祖母と約100の御仏飯をお供えするのが、幼い頃からの日課でした」。日常的に仏事に触れ、僧侶になったのは自然な選択のようだが「やはりどこかしら迷いがあり、大学で一般企業を目指す友人たちと過ごし、影響を受けました」。自分の意思で選んだと言えるのは卒業後で、お釈迦様の故郷、仏教の聖地であるインドで働いてからだそうだ。「約1年間、日銭で暮らす人の多い農村部の孤児院に住み込み、小学校の先生をしました。生まれた場所に関わらず、笑顔があふれる子どもたちに接しているうちに心が固まりました」。英語のほかにヒンディー語を必死に覚えたことも振り返り、「感染拡大がなければ、もう数年身を置きたかった」とも語る。

住職の名代として経験を積む

日蓮宗の檀那寺であり、同時に永代供養墓納骨堂は、宗派を問わず幅広く受け入れる妙政寺。海慎さんは、境内や墓所の清掃、管理にも責任を持って関わっており、京都での役職もある住職の名代として、法要を行うことも増えた。日々の相談にも気軽に応じてくれる。「まだまだ青いので、答えを出すことは難しいこともあるかと思いますが、誰かと話したいときなど遠慮なくお越しください。私も人生の先輩とお話できたら、少しずつ芯が通っていくと思うのです」。相手の話をしっかりと聞き、問いかけや確認に対して、そうです、そうですと肯定的に受けとめる姿勢が印象的だ。「お寺をしっかりと守りながら、地域の居場所になりたい」と謙虚に語る。

お寺で できる新しい取り組み

その話の流れで、「実は野望があるんです。お寺にカフェを作れたら、もっと敷居が下がるのではないかと…」。料理が趣味で、イベントでカレー屋を出店したこともある海慎さんらしいアイデア。「カレー屋は、本場のインドで毎日食べた、おふくろの味の再現でした。《シベリア》好きの甘党なので、お寺のカフェは、また別の雰囲気になるかもしれませんね」と構想を練る。
同寺は近年、本堂でのウィーンフィルのチャリティーコンサート開催や仏教音楽による法要、勝俊公のキャラクターグッズ制作など、画期的な企画を打ち出してきたところだが、海慎さんにより、さらに新風が吹き込まれるに違いない。僧侶としてはかなり珍しい長髪は「ヘアドネーション(ウイッグ用の寄付)」のため。「頭を丸める前の今しかできない」と心は決まっている。

INTERVIEWEE DATA
備後長久山 妙政寺(びんごちょうきゅうざん みょうしょうじ)
広島県福山市北吉津町1-6-7
TEL:084-923-6917

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