INTERVIEWEE
ともしび腱引き療法
道場主・腱引き師 芝吹 亘 さん(42)
「私を救った療法」を多くの人に
左手が右の脇の下にすら届かない。前職で首と肩を痛め、歩くのさえ苦痛な状態だった芝吹さんは、手術に踏み切った。その後1年半、リハビリの効果も上がらず、様々な施術を次々に試すも自分には合わず。「自分はもう終わっとるな」と諦めかけたとき、戦国時代の武術の流れを汲み発展したとされる腱引き療法のことを知った。
すがるような思いで、伝承者と言われる小口先生に施術してもらったところ、「えっ!?てなった。1年半も悩み苦しんだものが、たった一度、2分半で腕の可動域が回復したんです」。そのときの動画を見ながら、光を感じた奇跡の瞬間と振り返る。あまりの感動に「同じようにどこに行っても治らない人のともしびになろう」と即脱サラ。静岡本部でみっちり、2ヶ月間も泊まり込む研修から始めて昨年5月、腱引き師の道を歩み出した。
広島県東部で唯一の腱引き道場
芝吹さんを救い、人生を変えたこの腱引き療法は、ごく簡単に言うと、筋肉と骨をつなぐ腱の歪みやねじれを定位置に戻す施術。レントゲンには映らないので、骨と筋肉の位置関係を1つ1つ確かめながらピンと張られている腱を指先で引っかけるようにして弾いていく。正しい位置に刺激を与えながら戻し、誤った神経への刺激も断つという理論だそうだ。肩こり、頭痛、首痛、慢性腰痛、坐骨神経痛、ストレートネックなど様々な不調に対応する。腱引き師は現在県内に3人、県東部には芝吹さんしかいない。
また、施術する場所を「道場」と呼ぶが、患者側が何か運動をする、鍛え合う、というものではなく、腱引き師に体を預けておけばよい。叩くことも骨をボキボキさせるようなことも無く、基本的には無痛の穏やかな施術だ。毎日頭痛薬を飲んでいた人から薬から解放された、という喜びの声も届く。「マスクをするだけでも首にストレスがかかり、携帯で下を見ている時間が長くなっているので、特に思い当たる原因がなくても不調が生じ易いです。この療法で無理なくきっと楽になりますよ」と笑顔を投げかける。
福山に腱引きあり、福山に忍者あり
「最近、忍者をやっています」。趣味を尋ねるとこう返ってきた。無論、潜入・諜報活動をしているわけではない。密かなブームにもなっている、忍びの扮装で仲間と野山を駆け回るのだという。自分が不調だったときには考えられなかった楽しみだ。先月22日の忍者の日に〝デビュー〟したばかりで、SNSへの投稿も楽しむ。
一時は我が子を抱き上げることもままならなかった腕で、苦しむ人を救う芝吹さん。近く子ども忍者教室も開きたいと考える。「福山に腱引きあり。同時に、築城400年の福山城に忍者あり。これから両方で福山を盛り上げたいと思っています」と充実ぶりを語っている。
INTERVIEWEE DATA
ともしび腱引き療法
福山市千田町3-60-3
TEL:080-3873-1365