シリーズ経口血糖降下薬⑤【チアゾリジン薬】

 チアゾリジン薬は1999年に登場した、核内受容体PPARγに作用して血糖降下作用を有するお薬です。PPARγは転写因子ですから、様々な蛋白を発現誘導したり、また抑制したりします。ですので、研究に使用されるにつれ、多くの基礎研究データが出てきました。PPARγの作用には大きく2つの働きがあり、
①脂肪細胞の分化を促進し、肥大化した脂肪細胞を小型化させることで、骨格筋・肝臓・脂肪組織において、糖取り込みを促進し、肝臓で糖新生を抑制し、血糖を低下させます。
②小型化した脂肪細胞から抗動脈硬化作用をもつアディポネクチンを分泌させたり、また酸化ストレスによって惹起される炎症反応を抑制したりしますので、動脈硬化やNASH(非アルコール性脂肪肝炎)などの進展抑制に関わります。実際、大規模臨床試験(Proactive試験)でも心筋梗塞や脳卒中の発症を減らすことが証明されました。

 しかし、PPARγの作用は必ずしも生体にとっていいものばかりではありません。アディポネクチンの血中濃度が上昇すると、脳内に入って食欲を増やしてしまうこと、またその影響で食事摂取量が増えると、せっかく小型化した脂肪細胞にどんどん脂肪が蓄積して、肥満を助長してしまうこと、尿細管のNHE3というナトリウム吸収チャンネルの発現を増やしてしまうので、塩分が体内に貯留し、下腿浮腫や心不全を引き起こすこと、骨吸収因子を増やすことで女性の骨粗鬆や骨折のリスクを増やすことなどです。以前、話題になった膀胱癌の発症リスクに関しては、現在では否定されていますが、膀胱癌の治療中に関しては、使用を控えるべきとなっています。

 従って、血糖を下げるだけでなく、このような様々な作用を併せ持つお薬ですので、患者さんへのメリット、デメリットを総合的に慎重に判断して投与することが求められているお薬になっています。

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