【異業種リレーの「わ」No.649 】「お客様に寄り添う“墓守”になるために」

INTERVIEWEE No.649
河本石材(こうもとせきざい)
代表 河本 好則 さん(38)

地域に密着して107年

 弊社は、大正元年(1912年)に曾祖父が石屋として立ち上げ、創業100年を超えました。現在従業員は8人います。108年目を迎える来年、私は4代目として正式に、父から事業を継承します。長く建墓工事がメインでしたが、父の代になって、備後一宮神社をはじめとする地元の神社仏閣の修繕事業や、霊園の開発・販売・管理にも力を入れ始め、さらに、東日本大震災を機にソーラー発電事業にも乗り出しました。
 弊社では、墓石の設計から施工までを一貫して行なうことで信頼を得てきました。現在は、CADソフトでおこした図面をもとに、石を加工し、書家の文字を手彫りして、土台を固める基礎工事を経て据え付けています。霊園事業は、お墓をお客様とともに守っていく〝墓守〟のサービスとして始めました。既存の霊園を引き継いで地面に撥水・防草機能を持たせ、駐車場も整備して販売しています。周囲の草刈りも定期的に行なうことで付加価値を高めています。霊園は、自社開発した2ケ所を含め、町内に5ケ所あります。

父の覚悟、自分の覚悟

 2009年に入社するまで私は、家業のことを詳しく知りませんでした。単に、墓石を加工して据え付ける仕事だと思い込んでいたので、デザインから考え、目に見えない基礎まで丁寧に工事し、さらに墓地の提供・管理まで請け負うという、石材店では珍しい一貫体制を築いていて驚きました。父は工場建設や機械導入のための借金も返し終え、売上げもぐんぐん伸ばしていました。その全てが、私の一生を支えるためだということは、口に出さずとも分かっていました。
 実は、私は生まれつき髪の毛や肌の色素がとても少ない「先天性白皮症」、一般に「アルビノ」と呼ばれる病気です。加えて、幼少時のおたふく風邪が原因で、左耳は全く聞こえません。顔や手など見えるところは色素があるため、髪の毛を染めることで周りには気付かれず過ごせてきましたが、「自分は存在してはいけない」という後ろめたさを、常に抱えて生きてきました。
 そんな息子が一生涯困らぬよう、会社を安定させるためにがむしゃらに働き、質素倹約に生きる父を横目に、私は荒れ放題。20代半ばで、ついに内臓を壊し長期入院しました。否応なく自分と向き合う時間ができ、このままではいけないと心を入れ替え、退院後、弊社に入社。まずは在庫管理からはじめ、岡山の石材卸業社で3年ほど働いた経験を現場で活かしました。
 今の妻と出会ったのが、ちょうどこの頃で、精神的に支えてもらいました。さらに、産まれた娘に何の障がいもなかったことで心を救われ、そこからは生まれ変わったように真面目に働き、今に至ります。誰かのために生きる覚悟が、こんなにも自分を必死にさせるのだということを知りました。昨年12月には息子も元気に産まれ、我が家は一層賑やかになりました。

まずは周りを幸せにする

 昨年夏、商工会青年部の主張大会で、初めて病気を公表しました。自分の半生を自分でまとめ、自分の声で伝えたことで、進むべき道が見えた気がしました。父ほどのことはできませんが、私も会社に貢献したいと思い、今年、お題目と家名を併記できる洋型墓石を開発しました。ある住職の要望を受け、試行錯誤の末に完成した、グランドピアノを真上から見たような形の墓石です。注文が入る度、自信につながっています。
 私は今、どうすれば家族や従業員、お客様を幸せにできるだろうかと考えています。まず周りを幸せにしないと自分が幸せになれないということを、父の生き方から学びました。父は、私が周りに病気を打ち明けたことをまだ知りません。近いうち、親子でゆっくり話したいです。寡黙な父が、どんな想いで会社を築いてきたのか聞いてみたいです。きっとそれは、これから私が信頼される〝墓守〟に成長するために必要なヒントになるはずです。

■ SHOP DATA
河本石材(こうもとせきざい)
広島県福山市新市町上安井215-1
TEL:0847-52-4078

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