【異業種リレーの「わ」No.652 】「特殊鋼切断にかけては速度も精度も負けません」

INTERVIEWEE No.652
シブハチ有限会社(しぶはちゆうげんがいしゃ)
代表取締役専務 澁谷 千晶 さん(51)

極小ロット、即日納品が強み

 弊社は特殊鋼を切断し、販売する会社です。昭和63年(1988年)に義父が創業し、2017年に夫が継承しました。特殊鋼とは、鉄に様々な元素を特殊配合した鋼のことで、用途に応じて元素の種類と量を調整し、硬度や強度、耐蝕性、耐熱性などの特性があります。最大で重さ2トンもある丸材や角材、H型鋼を、受注内容に応じてカットし、部品の加工業者などに卸しています。製品は、自動車や船舶の部品、工作機械の一部などに使われます。
 切断を行なうのは、工場長をはじめとする7人の従業員。鋼は種類もサイズも多種多様ですから、その性質に応じて7基の切断機を操り、鋸刃のスピードを調節するなどして美しい断面に仕上げていきます。切断したブロックだけでも数十㎏に及ぶこともあり、また、鋼を切り落とす鋭い刃物も当然凶器ですから、作業中は高い集中力を要します。
 強みは、大手では不可能な極小ロットに対応できることと、即日納期が可能なこと。配送も行なっています。特に、機械図面を見て、その機械を作るのに必要な材料を必要な長さにカットしてセットで届けるサービスは、他社があまりしていないようで喜ばれています。

従業員あっての仕事

 下の子が手を離れた18年前に事務員として入社しましたが、今は現場作業と、軽いものなら配達もしています。ここ数年は電話営業もして取引先を少し増やしました。
 現場作業は本当に大変です。小さなブロック一つ運ぶにも相当な力が要りますし、納期対応のため私が数日間泊まり込み、夜な夜な作業することもあります。私では動かせない機械もあるので、すべての作業はできませんが、従業員と一緒に力仕事をすることで、見えてきたものがいっぱいありました。鋼の素材次第では鋸刃の消耗を早めてしまうことも、直径が1㎝以下の細い鋼だと、刃の目にはまって機械を止めてしまうことも、従業員から聞くだけでは、本当の意味での大変さは理解できなかったと思います。
 工場勤務なので、夏は暑く、冬は寒いのが当たり前。そんな中でも作業効率を落とすことなく、みんな頑張ってくれています。時にはぶつかることもありますが、無理なお願いをしてもしっかり応えてくれるので心強いです。このゴールデンウィークも交代で出てもらって、切断を一緒にしました。うちの従業員の仕事の速さと正確さは、この近辺の職人には絶対に負けないと胸を張って言えます。
 私にとって従業員は家族です。朝ご飯を食べて来ない若い従業員には、おにぎりを作って来ることもあります。また、普段から何気ない会話をして、身体の状態や心の状態も気に掛けるようにもしています。
 仕事に追われる毎日なので、趣味の時間はなかなか作れませんが、プリザーブドフラワーやハーバリウムを作ったり、教室やワークショップを開いたりしています。今月は最後の日曜日に、卸町にある門田商店さんで、創作フラワー・ポポとして、ハーバリウムのボールペンを作るワークショップを開く予定です。

強みを活かすため

 最近、特殊な材料を2万個ほど切断しました。とあるスポーツ用品の部品に使われます。何が流行るかによって、求められる材料が変わるのも、この仕事の面白いところです。アンテナをしっかり張り巡らせ、チャンスを逃さないようにしたいです。
 目下の課題は、新しい切断機を導入すること。硬度が高い特殊鋼を扱う場合は、鋸刃を動かすスピードを緩める必要があり、効率が多少下がってしまうのです。今後、どんな材料の切断を求められても、強みである即日納期を実現できるよう、従業員の能力を最大限に発揮できる環境を整えていきたいです。

■ SHOP DATA
シブハチ有限会社(しぶはちゆうげんがいしゃ)
広島県福山市芦田町下有地878-1
TEL:084-950-0081

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