【異業種リレーの「わ」No.666 】「技術と開発力で寝具の困りごとを解決する」

INTERVIEWEE No.666
イシケン 株式会社(いしけん かぶしきがいしゃ)
代表取締役 石川 倫之 さん(52)

創業70余年の技術を礎に

 昭和21年に祖父が創業した綿・絹綿の製造会社が寝具製造会社になり、現在の直販まで行なう“ふとん工房”になったのは平成11年。長く小売店に寄り添い、その店だけのための商品を製造してきた技術を生かして、4代目の私が経営の舵をとっている今も、「お客様のニーズを細かく分析し、予算に合わせて快適な寝具を作る」ことを大切にしています。
 羽毛やキャメル、アレルギー対応の寝具をはじめ、独自開発した人工羽毛「エアーフレイク」を使った寝具の製造販売、さらに羽毛布団の仕立替えや寝具レンタルも承っています。また、ベビー布団の専門店SukuSukuを別会社として設立し、中綿までオーガニックにした寝具セットなど、こだわりの自社商品をネットで販売。現在ベビー寝具の製造が、弊社の売上げの大半を占めています。
 中でも、防ダニ機能のついた昼寝布団と、埃の出ないエアーフレイク布団は、子ども目線を持った良質な商品として、経産省などが推進するキッズデザイン賞を受賞しました。

開発力も強み

 寝具は移り変わりが激しく、業績がいいのは超高級布団メーカーと安価な大量生産型メーカーが主で、我々“真ん中”はなかなかモノが売れません。そんな厳しい環境の中、幸運にも多くの方に独自商品を支持していただき、弊社の今日があります。最初のヒット商品は、昭和50年頃に祖父が考案した、こたつ専用の敷布団でした。欧州での視察で知ったクッション性の高い端切れをヒントに、マットレスのように分厚く弾力性の高い専用布団をドイツ製のキルティング機を導入して開発。それが売れに売れ、弊社は急成長しました。
 それから30年後、クールビズ、ウォールビズという言葉が飛び交った時代には、大手通販会社と開発した、涼感素材の寝具と蓄熱特殊素材の寝具が大ヒット。テレビ番組でも紹介され、大きな反響を呼びました。しかし、その一方で、鳥インフルエンザに頭を抱えた時代でもありました。もともと、良質の羽毛はファッション業界を優先的に回りますが、大量の鳥がウイルスに犯され殺処分されたことで、布団業界は深刻な原料不足に陥ってしまいました。羽毛を安定して確保するにはどうすればいいか。悩み抜いた末、大手繊維会社クラボウと共同開発し、ポリエステルを羽毛のように特殊加工して生まれたのが、前述した「エアーフレイク」です。羽毛を上回る保温性があり、家庭の洗濯機で洗えて乾くのも早い。埃も出にくく無臭です。この新素材を使った寝具は福山のふるさと納税の返礼品に選ばれており、今年はついに、エアーフレイク自体が福山ブランドに認定されました。

求められる商品づくりを

 今はモノが売れにくい時代ではありますが、一度使って気に入ったものは、お客様が自ら製造元を調べ、問い合わせて手に入れようとする時代でもあります。ですから、弊社のこたつ布団はいまだに寒さの厳しい地域でニーズがありますし、蓄熱特殊素材の寝具を求める声も届くことがあります。「もう無いと諦めていたのにあった!」という喜びの声は、我々にとって大きな励みになります。大切なのは、お客様に求められ喜ばれる商品を作ることだと改めて感じており、今後も4代にわたって培った技術を武器に、寝具にまつわる“困りごと”を解決することで、我々の存在意義を高め続けたいと思っています。
 次なる目標は、エアーフレイクを様々な企業に素材として求めてもらえる商品にすること。アウトドアや防災など様々な業界にアプローチし、価値を最大限に引き出していきたいです。そして同時に、今、繊維業界で注目されている環境を配慮したエコ素材を使用した商品の開発にも乗り出したいです。

■ SHOP DATA
イシケン 株式会社(いしけん かぶしきがいしゃ)
広島県福山市駅家町上山守244
TEL:084-976-1145

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