INTERVIEW No.776
大和屋 本店
代表取締役社長 塩出 浩二 さん(47)
明治5年創業、老舗和菓子店
「大和屋」は明治5年創業、140年以上続く和菓子屋です。私は今年、7代目「大和屋」社長に就任しました。
私は大学卒業後は、厨房機器メーカーの「ホシザキ」に入社し、関東で働いていました。入社8年後、当時大和屋の社長をしていた父に「職人が減って困っているから、戻って来て欲しい」と言われました。子どもの頃から和菓子にも、和菓子を作る現場にも慣れ親しんでいたので、和菓子職人になることへの抵抗はなく、了承しました。しかし、なってからが大変でした。当時はまだ、「見て覚える」というのが職人の常識だったので、分量も作り方も基本的に教えてもらえず、見て、実践しての繰り返しでした。感覚として身に付き、最低限納得できるものが作れるまでに、4、5年はかかったと思います。
新商品も多く開発
「大和屋」には創業当初からの「柚餅」など50年、100年作り続けている商品がたくさんあります。豆を炊いて餡を作るところから、長く受け継いだ伝統の製法を守り続けています。さらに近年では、新商品の開発も活発に行っています。紫芋のスイートポテトにクリームチーズが入った「ぽてちぃ」は、約5年前に私が初めて開発した商品です。スイートポテトの餡を柔らかい甘さにしてチーズの酸味がすっきり引き立つように作っています。猫のあしらいが付いた、紫色の可愛い見た目も相まって、若い世代からも人気の商品になりました。また、「レモンクリームチーズ大福」はレモンを皮まで使うので、安全で安心な広島県産の無農薬栽培のものを選んでいます。
時代の変化にも対応する
和菓子の味の好みは時代の流れによって変わります。例えば50年前のレシピで作った餡は、私でも食べられないくらい甘いです。味をいきなり大きく変えると、ご愛顧いただいている方を裏切ることにもなるので、気づかれない程度に少しずつ変化させることで、時代の変化に対応してきました。
それから、商品の売れ方も昔と変わってきました。例えば看板商品のカステラは、1本単位で売れることが普通だったのですが、近年では切り分けた個包装の方が出るようになっています。核家族が増えたり、一度に集まる人数が減ったり、生活スタイルも変化していることが理由だと思います。「大和屋」では味だけではなく商品の出し方も、時代の要求に合わせて、変化を加えるようにしています。
ずっと続くお店を目指して
和菓子職人の喜びは、自分の作った作品が、見て、食べて喜ばれることです。こんな仕事はなかなかないと思います。
これからも私の作ったお菓子で、ひとつでも多くの笑顔が作れればと思います。それによって「大和屋」が、私の代を超えて1年でも長く続いていけばと願っています。
■ PROFILE
1974年生。福山市出身。大学卒業後、業務用厨房機器メーカーに8年間勤務した後、「大和屋」に入社。今年、代表取締役に就任。創業明治5年の伝統の味を現代まで受け継ぎつつ、和菓子の枠を超えた新しい商品づくりにも挑戦している。
■ SHOP DATA
大和屋
福山市宝町6-8
TEL:084-923-0574