INTERVIEWEE
料理屋 おゝ貫(おおぬき)
店主 渡辺 大輔 さん(32)
幼い頃からの夢にひたむきに
「幼い頃から台所で遊んでいて、小学1年のときには、料理人になりたいと言っていたと母から聞いています」。料理屋おゝ貫の店主・渡辺さんが育ったのは、ちょうど料亭を題材にしたテレビドラマや料理人が対戦する番組が一世を風靡した時代。「かなり影響も受けました。高校卒業を待って、知人の紹介で京都にある老舗旅館へ修行に入りました」。 一般に厳しいとされる料理人修行。それまで京料理を食べたことがなかった渡辺さんにとっては、なおさらだったと想像される。だが「好きなことを覚えられると思うと、結局、楽しかったです。仕事への姿勢でお手本を示してくれた、料理長の人柄も励みでした」。9年で京料理のいろはを身に付け、滋賀のホテルに移った。ここからの1年半で、和食レストラン、宴会調理、対面式の鉄板料理と幅広い経験も積んだ。
今日のいいものを美味しく
昨年、31歳で独立。神辺町上御領出身ということもあり、「店を持つなら福山市北部と決めていました。出張や接待が主となる中心部よりは、地元の人がリピートしながら通ってくれる店にしたいと思ったのです」。オープンの4月20日は、京料理修行の初仕事日と重なった。 魚は、北海道から鹿児島まで、魚屋が目利きした〝今日のいいもの〟を仕入れる。「いい魚があると聞けば、じゃあそれ!って感じで仕入れます。欲しい魚を探すのではなく、良い素材をどう活かすかが料理人として腕のみせどころです」。何が来ても美味しくするという自信があるからこそできる言動だ。なかでも、鰹の風味豊かな土佐酢を効かせた料理が得意。これからの季節、チイイカ、ハモ、タコと旬の素材がめじろ押し。トマトのところてん、ジュンサイなど野菜系もオススメで、これらが陶磁器、漆器、ガラス…こだわりの器に繊細に盛り付けられるのにも注目したい。
一を以て之を貫く
椅子席22人までの慶事弔事に対応しており、渡辺さんの店に行かないと食べられない料理に対しても評価が高まってきた。「人の意見に耳を傾けながら、このひと皿に正直に真剣に創ることを心がけています。そして食文化をちょっとずつ底上げしながら、お客様が途絶えずに来てくだされば理想的ですね。今後は、昔ながらの丁寧なだしのとり方や化学調味料に頼らない味を、小学校に出向くなどして伝えたいと思っています」と食育での地域貢献も考える。 座右の銘は「一以貫之」。大輔の大と貫をあわせた店名に、料理人としての姿勢を表現した。家紋をもとにデザインした店のロゴは、3つの米俵を丸く囲む稲穂。「実るほど頭を垂れる稲穂かな。これも私の指針です」。
INTERVIEWEE DATA
料理屋 おゝ貫(おおぬき)
広島県福山市神辺町新湯野33-8
TEL:084-967-5755