新市町常の金名地区に、江戸時代中期に造られたアーチ式ダム「金名の郷頭」で2019年4月28日、重さ1tの岩をロープで引っ張る石引体験が行なわれた。
古墳の石組み技術を活かしたこのダムは、水流を調節する堰として、また金丸から府中に通じる橋として人々の暮らしを支えた貴重な史跡。雨水を放出する水門部分をはじめ、川床や側壁面まで石を敷き詰めて補強されており、地元の小学生の地域学習の場にもなっている。今回の石引体験は、毎年子どもたちから真っ先にあがる「こんなに大きな石をどうやって積み上げたの?」という疑問に応えるため、金名の郷頭・権現古墳群を守る会(石口寛治会長)が初めて企画。周辺に整備された郷頭公園の5周年記念ごうとう市にあわせて行なった。
郷頭そばの広場に用意されたのは、水門のサイズに匹敵する約1m四方、厚み40㎝の岩。井桁状に組んだ木の上に乗せてあり、巻き付けたロープを小中学生ら約30人が息を合わせて引っぱった。やがて岩が丸太の上をゆっくりゆっくり滑るように動きだすと、場内に拍手が沸いた。
率先して石を引いた海原優吾君(常金中3年)は、「石を運ぶ大変さが分かったから、これだけ大量の石を見つけて運んで整える作業はもっと大変だったと思う。昔の人は力が強い人が結構いたんだな」と先人たちの偉業に感銘を受けていた。