INTERVIEW No.748
マルナリ葡萄園(ぶどうえん)
代表 佐藤 成俊 さん(60)
ぶどう農家に生まれ
沼隈の生まれです。昔からこの辺り一帯は、山の斜面を切り開いた段々畑でぶどう栽培が盛んで、私の家でも祖母が世話をしていたぶどう畑を両親が引き継ぎ育てていました。父は会社勤めをしながらの兼業で、専業でぶどう栽培に従事したのは定年以後のこと。それまで我が家のぶどう栽培は、母が中心となって行い、休日に家族総出で手伝うスタイルでした。
私は高校を出た後、地元の企業で、会社員として働きました。転機は、42歳の時。両親から、高齢のため農園を辞めようと思っていると相談され、“脱サラ”して、ぶどう農家に転身しました。
手のかかるぶどうの栽培
ぶどう栽培が本格的に稼働するのは、新芽が出始める3月頃から出荷が終わる9月末にかけて。その前段階として、ぶとうの木が休眠期に入った年末頃から、古い枝を切って新芽を迎える準備を進め、2月上旬には雨粒を防ぐためのビニール屋根を掛け終えます。
私は、露地と、隙間や畑の周囲までもビニールで覆う“なんちゃってハウス”を作り、合計1・1ヘクタールの農園で収穫時期を調整しながら、計画的に栽培を行っています。2月でもハウス内は、太陽の光で30度近くになるんですよ。この暖気のもとで、芽がすくすくと育ち、5月上旬には実が付き始めます。この時行う摘粒(てきりゅう)は、おいしい実を付けるため余分な粒を落とす作業で、味にも見た目にも関わる最も重要な作業の一つ。世間は連休で賑うこの時期は、私達ぶどう農家は1日もぶどうから目が離すことができない繁忙期です。1房1房手作業で行いますから、とても大変な作業ですよ。
6〜7月に袋掛けをした後は、実を大きく育てる段階。私が栽培している畑は国策として開拓された八日谷樹園地内にあり、散水は整備されたスプリンクラーで行えるので大変助かっています。ちなみに、ぶどう畑を広大な敷地内に集合させているのは、全国的に珍しいそう。ぜひ青々と茂った姿を見てもらいたいですね。
沼隈ぶどう発展のために
今育てている品種は、沼隈特産のニューベリーA、贈答品としても人気のシャインマスカット、ピオーネ等の12種類。農業試験場から配布されたぶどう等、常に新しい品種も試しています。気候等の条件に左右されますから、同じ出来栄えのぶどうは二度と作れません。ですが、蓄えた経験から状況を見極め、おいしいぶどうになるよう、都度手をかけています。毎日が真剣勝負ですね。
また組合の活動では、近年、高齢化や後継者問題解消のため、育成に注力しています。若者が専業で食べていける“稼げる農家”にすることが目標で、私もおいしい沼隈ぶどうを安定して出荷し続けることで、発展の下支えをする所存です。お客様に選ばれ、喜ばれるぶどうを、ここから発信します。
■ PROFILE
1961年生。福山市(旧沼隈郡)出身。高校卒業後、一般企業に入社。2003年、42歳で退社後、両親のぶどう農園を受け継ぐ。2020年より、沼隈町果樹園芸組合販売部長も務める。マルナリ葡萄園 代表
■ SHOP DATA
マルナリ葡萄園(ぶどうえん)
事務所/福山市久松台2-7-17
TEL:090-2806-0845