Vol.32 下肢静脈瘤の成因について

Q. 下肢静脈瘤はどうして起こるのでしょうか。

A. 下肢静脈瘤の成因には、私たちの体をめぐる動脈と静脈がかかわってきます。動脈は、心臓から出た血液が通る血管で、酸素や栄養を運びます。静脈は、心臓へ戻る血液が通る血管で、動脈で運ばれた酸素や栄養が体内で使われた後の不要になった二酸化炭素や老廃物を心臓に戻します。
それをスムーズにするのが、血液を心臓に戻す「静脈還流」という働きで、次のような三つのシステムが備わっています。

「逆流防止弁の働き」
静脈血が体の隅々から心臓に戻るとき、足の静脈血は心臓より随分下にあるため、重力に逆らって上っていかなければなりません。そのため静脈の中には一定の間隔で弁がついています。この弁は、逆流防止弁と呼ばれ、血液が心臓に向かって流れる時だけ開き、通過すると閉じて、流れた血液が逆流しないような仕組みになっています。この弁がこわれると、血液が逆流して下肢静脈瘤が起こります。

「筋ポンプ作用」
歩いたりして足を動かすと、ふくらはぎの筋肉が収縮と弛緩をくり返し、足の静脈を圧迫して、足の血液を心臓のほうに押し上げます。この働きを筋ポンプ作用といいます。

「呼吸」
息を吸うことによって胸郭が広がり、胸の中の圧が下がることを利用して、静脈血が心臓に戻る働きを助けます。

これらのシステムのどれか一つがうまく働かなくなっても、静脈還流に障害が起こり、足の血液が心臓に戻りにくくなって、下肢静脈瘤が起こります。

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