INTERVIEW No.860
株式会社 横島ファーム
代表取締役 新田 龍二 さん(45)
養豚農家の事業を継承
もともと内海町横島の「横島ファーム」一帯には、昭和50年(1975年)に国・県・内海町の推進により発足した岩谷養豚組合があり、5軒が従事していました。平成15年に組合解散後は、最後の1軒となった渡壁養豚場が3軒分を引き継いでいました。渡壁さんの長男と私が同級生で、閉鎖予定と聞いたここの豚を食べた時あまりの美味しさに「今までの豚は何だったんだ?」と衝撃とも言える驚きを感じたのが、サラリーマンだった自分を衝き動かしたきっかけです。「子どもが大きくなってもこの豚を食べさせたい」と会社を設立、養豚業を引き継いで自ら乗り出しました。2020年のことです。
餌も世話も手を抜かない
挑戦する覚悟で参入しましたが、コロナ禍には1tあたりの餌代が最大で2・5倍まで値上がり。小麦とトウモロコシをたっぷり混ぜたオリジナル飼料にこだわる当社としては予想もしない大打撃でした。それでなくとも市場に出回る豚肉には上・中・並の区分しかなく、美味しさ重視で取り組むのは経営的にとても厳しいのです。
しかも、父豚と母豚の餌は1頭ずつ手で配ってフンの様子をチェックし、交配は人工授精ではなく選りすぐりの系統同士で相性と発情期を見分けて行う、豚舎を清潔に週1消毒、抗生剤を極力減らしながらも健康…など手間暇をかけた自慢の豚たち。ならば直接自分たちでPRしながら売ろう!中間マージンもなく消費者に喜ばれる。そう考えて2022年、田島に直売所を開きました。
ブランド名は「うつみ潮風豚」。当社全体の約5%。赤みに適度なサシが入って繊維が細かく柔らかいメスで、口に入れると旨みが広がります。シンプルに塩胡椒でソテーすると、味の違いがよくわかりますよ。
一度、コスト削減で餌を変えたことがあり、そのときは肉質や味に満足できなくて、10ヶ月間「うつみ潮風豚」を名乗らず、ノーブランドで卸し、餌も元に戻しました。今は自信のある精肉と、シューマイや焼き豚などの加工品を直売所で販売。産直市、鞆の軽トラ朝市にも出店し、複数の高級料理店、飲食店のご指名もいただくようになりました。昨年12月からは、大黒町商店街でも金土日に直売所を開いています。
島の活性化の起爆剤に
私は、島生まれではないからこそ、ここを拠点に島の人に愛されるファームにしたいとの思いが強くあります。直売所で島の案内チラシを配ってランドマークの役割を持たせ、活性化の起爆剤にと考えたり、町内の2小学校が閉校になった時、児童全員にお肉をプレゼントしたり。将来、新鮮な海の幸や美味しい豚肉など、島の自慢を思い出してくれたら嬉しいですね。
今年は、豚舎の屋根改修の他、井戸をもう1本堀って6本にする予定です。そのため飼育数を1200頭から800頭に戦略的に減らしており、来年以降は順次増やしていきます。
■ PROFILE
1979年三原市生まれ。尾道北高校から駒澤大学に進み、地元金融機関、福山市内の企業を経て、2020年に会社を設立し、養豚事業を継承。「うつみ潮風豚」に力を注ぐ
■ SHOP DATA
よこしまファーム直売所
福山市内海町ロ393番地4
TEL:084-986-3660
https://yokoshimafarm.com
インスタ/@yokoshima_farm