新しい作用機序を持つ経口血糖降下薬イメグリミン(商品名:ツイミーグ)が発売されました。この薬の作用機序を一言で言うならば、ミトコンドリアの機能改善薬と言えます。ミトコンドリアは、細胞内小器官のひとつで、生体活動に不可欠なエネルギーであるATPを作り出す器官ですが、なぜ、ミトコンドリア機能の改善が血糖を下げるのでしょうか。
インスリンを出す膵臓は、高血糖を感知すると、その糖をミトコンドリアで分解してATPを作り出し、そのATPがインスリン分泌のエネルギーに使用されますが、糖尿病患者さんでは、このミトコンドリアでのATP産生がうまくいかずに、インスリン分泌が低下してしまいます。ですから、イメグリミンは、膵臓のミトコンドリアの機能を改善させることでATP産生を元に戻し、その結果、低下したインスリン分泌を復活させることができます。
もう一つの機序として、肝臓におけるミトコンドリアの機能改善です。肝臓が、高血糖などの栄養過多状態になりますと、糖を燃焼させる酸素が相対的に不足し、ミトコンドリアから酸化ストレス(活性酸素種)という有害物質が発生します。この発生した酸化ストレスは、動脈硬化の元凶というだけではなく、インスリン抵抗性、すなわちインスリンによる血糖低下作用を鈍らせる作用があります。イメグリミンは、肝臓のミトコンドリア機能を向上させることで、この酸化ストレスの発生を抑え、インスリン抵抗性を改善させる効果が期待されています。
以上のように、インスリン分泌、インスリン抵抗性、両者を改善させる機序の薬は、これまでで初めてですので、今後、2型糖尿病治療においてどのようなポジショニングになっていくかを実臨床で見極めていきたいと思います。