新たな概念である糖尿病性腎臓病(DKD)とは?

 従来からの疾患概念である糖尿病性腎症は、高血糖によって糸球体が障害され、その結果、尿蛋白が出現することが特徴でした。RA(レニン/アンギオテンシン)系抑制薬が糸球体の輸出細動脈を拡張させることで糸球体保護効果があることから、高血圧合併糖尿病患者さんの第一選択薬となりました。従って、我々は、RA系抑制薬で糸球体圧較差を下げ、尿蛋白が減少すれば、糖尿病性腎症を防げる、と考えたのです。

 しかし、最近の疫学研究によると、尿蛋白が出ていないのに腎機能が低下する糖尿病が増えています。この原因は、腎硬化症すなわち、腎細動脈の動脈硬化や硝子化により、腎実質への血流量が減ることで糸球体や尿細管壊死に陥る病態と考えられています。一般的に、腎硬化症とは、糖尿病に限らず、高血圧、高尿酸血症、喫煙など、あらゆる生活習慣病がリスク因子であり、高齢化の進むわが国において、透析導入の原因として今でも増え続けている、やっかいな疾患です。従って、糸球体障害によって尿蛋白が出現する古典的糖尿病性腎症以外に、糖尿病性腎硬化症ともいうべき、尿蛋白が出ないで腎機能が低下する病態も考慮しなければならず、この2つの病態の総称として、糖尿病性腎臓病(DKD)という疾患名が新たに設けられました。

 ここで重要なことは、腎硬化症が背景にある、蛋白が出ないDKDの場合、RA系抑制薬を使用して糸球体血流を低下させてしまうと、逆に糸球体虚血を助長、腎機能低下を加速させるので、RA系抑制剤を減量/中止したほうがいいこと、また、血圧も、腎血流を維持させるために、糖尿病性腎症で言われている目標値130/80mmHgよりも10mmHgくらい高めでもよい可能性が示唆されています。一方、SGLT2阻害薬の透析予防などの腎保護効果は、尿細管の酸素消費量を減らすことで、腎硬化症による腎虚血から守っている可能性が示唆されており、DKDだけでなく、慢性腎臓病(CKD)にも効果がある可能性があり、現在、治験を各メーカーが実施しています。

 結論を申しますと、DKDと言っても、尿蛋白があるかないか、どちらの病態であるかと診断することは薬剤選択に関わる非常に重要な問題ですので、今後の糖尿病性腎臓病ガイドラインの内容にも注目をしていきたいと考えています。

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