INTERVIEW No.872
ちりとり鍋 月(ちりとりなべ つき)
店主 小川 哲生 さん(33)
「月」だけの自家製スープ
一昨年の秋に「ちりとり鍋 月」をオープンしました。ちりとり鍋は、関西発祥。正方形の浅く平らな、ちりとりに似た形の鍋で調理します。特別に仕入れたプリプリのホルモンをたれに漬け込み、牛肉や豚肉、鶏肉、、タマネギ、もやし、キャベツなどと一緒に、鶏ガラベースの味噌スープで炊きます。上に旨辛の味噌を乗せた、ここだけの秘伝ブレンド。海鮮系のトッピングやトッポギが人気です。
辛さ調節もできるので、お子様もどうぞ。私の4人の子どもたちも食べます。全員名前に“月”が入っているので、屋号を月にしました。ちりとり鍋の種類も基本の「月」と黒毛和牛の「満月」としています。
長く濃くつながれる
飲食経営に乗り出すまでは、不動産の営業を10年近くしていました。飲食はアルバイトすらやったことのない世界。「なぜ?」とよく聞かれます。営業をしているとき、いろんな人とつながって人脈ができたと思ったのですが、一定以上広がらないし、お客様とも取引が完了するとつきあいが薄くなってしまうのがもったいなくて。もっと長く近い関係でいられたら。そんな動機でした。取った、取られたという駆け引きではなく、みんな平和にワイワイやるほうが性に合っているようで、「向いていたんじゃない?」と周囲からも言われます。
最初は仕込み量や時間の感覚がわからなくて苦労しましたし、立ち仕事だから体もしんどい。それだけに何十年も長くやっている人をみて、心底すごいことだと尊敬を覚えます。
「ちりとり鍋」をメインに選んだのは、美味しい!珍しい!料理だと思ったから。飲食の修行をしていない自分が、福山でやっていくには、他の店と比べられないものをという消極的な理由も大きかったですね。
最初は本当に鍋だけというくらいのメニュー数でしたが、これだと夏場は注文が減ります。お客様の声を聞き、料理が得意な妻と一緒に勉強しながらメニューを増やし、今では串焼きや揚げ物をはじめ50品以上の一品料理で年中楽しんでもらえます。お客様がコンサルタントみたいな感じで、鍋以外でも居酒屋勝負ができる店に育ててもらいました。
世代を超えて思い出に残る
店のロゴ入り黒Tシャツにキャップがトレードマーク。お客様と紛れるようなスタイルが自分流です。これまで話すこともなかった業種の方をはじめ、多くの専門の方と出会って笑い合って、同じ空気を吸っている自分が意外でもあります。そして、人と人をつなげる声かけもできるのが自分の強みになったと感じます。
定年のない仕事ですから、我が子が大人になるまで、その先も神辺の深いところで地域の人にかわいがられながら、何十年も続けて行ける店にしたいです。親子で、孫と…世代を超えて思い出に残るような。まだまだ業界の新参者ですから、まずは1店集中で、いつかは!の思いを持って頑張ります。
■ PROFILE
1991年、新市町出身。約10年の不動産営業から飲食業に転身。2023年「ちりとり鍋 月」をオープン。転職を経て、人脈とメニュー数を増やしながら自らも楽しむ。
■ SHOP DATA
ちりとり鍋 月(ちりとりなべ つき)
広島県福山市神辺町下御領809-1プラザ国分寺107
TEL:090-8141-0133
Instagram:@chiritorinabe_tsuki