患者様は40代、女性。先天的に永久歯が9本欠損しており、そこに歯を入れてほしいと来院されました。口腔内を確認すると、上顎に乳歯が4本残存しており、レントゲンにて著しい歯根吸収を認めます。上顎左右2・3・4・5番と右下7番の計9本が欠損しており、治療計画として乳歯抜歯後、上顎左右欠損部にはインプラントを埋入し、前歯部は反対咬合(噛み合わせが逆)になっているため、矯正治療も行うことにしました。
まず、矯正治療にて前歯部の反対咬合を改善する必要があります。骨格性反対咬合の要素が強く、2番から5番にかけて歯がないため、固定源が維持できません。このような矯正治療は非常に難解だと理解していましたが、なんとか被蓋改善を達成し、正常咬合を得ることができました。
しかし、矯正治療後のレントゲン写真にて上下前歯部の歯根吸収がみられました。これは矯正治療のリスクの一つに挙げられショッキングな出来事ですが、矯正治療をすると歯並びがキレイになる反面、その代償としてのリスクがあることもご理解いただけたらと思います。とはいえ、歯根吸収を起こしたからといって歯が抜けるわけではないのでご安心ください。
そして、矯正治療の終盤にインプラントを埋入しました。永久歯がない歯槽骨においては、盛んな骨の改造現象が行われていなかったため、骨幅が非常に薄く、3ミリ径の細いインプラントがギリギリ埋入できるか否かでした。左右とも3本埋入予定とし、右側は3本埋入でき、左側は2本埋入にとどめました。しかし、インプラントの長径は充分確保できたため、安定した初期固定が得られ、予後良好に経過しました。
3ヶ月後、セラミックにて補綴治療をおこない、全ての治療を終了しました。まさに最良の治療法と高品質な材料を使用し、審美性と機能性に優れた歯科治療ができたと感じております。
全顎矯正治療とフルインプラント治療を1人の歯科医師が施術することは非常に稀であり、当院ならではの治療法となります。