これまでにも述べてきましたが、GLP−1受容体作動薬は糖尿病治療に使用される注射薬であります。GLP−1受容体作動薬の作用の中で最も期待されるのは、持続的に食欲を抑制し、体重を減らすことですが、膵臓に対してインスリン分泌を促進させ、血糖値を下げる作用も持ち併せています。
約10年前、鳴り物入りで日本に上陸したGLP−1受容体作動薬でしたが、海外用量の半分が使用の上限であったことなどから、食欲の低下まで至らない肥満糖尿病患者さんが多く、体重減少作用も一時的でした。そのため市場の伸びは振るわず、笛吹けど踊らずの状態でありました。
ところが、5年前にインスリンとGLP−1受容体作動薬の併用が可能となり、状況は変化します。インスリン分泌を促進するだけなら、海外の半分でも十分であり、1日4回注射の強化インスリン療法から、基礎インスリン+GLP−1受容体作動薬へステップダウンする治療法が浸透し始めました。糖尿病専門医がGLP−1受容体作動薬を使用するのは、この基礎インスリンとの併用が一番多いというアンケート結果さえあります。
しかし、ここに来てようやく、昨年9月にGLP−1受容体作動薬リラグルチド(商品名ビクトーザ)の高用量(1.8㎎)が解禁、さらに基礎インスリンとリラグルチドの混合製剤(商品名ゾルトファイ)の登場と相次ぎました。また本年中には、いよいよ経口のGLP−1受容体作動薬も登場することがほぼ決定しています。
苦節10年、やっと真のGLP−1受容体作動薬時代が幕を開けたといっても過言ではありません。我々は、このGLP−1受容体作動薬を利用した新しい治療法に習熟していくことで、難治性の糖尿病患者さんの治療に貢献できたらと考えています。