密教の御祈祷で皆さんもよくご存知なものは護摩でありましょう。行者が仏さまの前に構えた炉に薪を投じて炎をあげてお祈りをしている姿を見たことがある方もおられるのではないでしょうか。炎を神仏として崇めて祈るという行為は、インドの古代宗教にも見ることができます。
火は人間が文化的生活を行うために、とても大きな力となっていると同時に、災害にあっては一度に全てを焼き尽くすとても恐ろしいものでもあります。一方、キャンプファイヤーや囲炉裏やキャンドルなど、揺らめく炎を眺めていると心が癒されるものでもあります。そのような姿は、まさしく神仏の姿のシンボルのように感じられるのです。
真言密教の荒行に「焼八千枚護摩供」があります。行者は精進潔斎して不動明王の真言を十万遍唱え、お釈迦様がこの世とあの世を八千回往来して生きとし生けるものを救済した故事に倣い八千枚の護摩木を焼くのです。令和の新しい御代にあたり、世界の平穏を祈って、この度、私は二度目の八千枚護摩を修行させていただきました。