INTERVIEWEE No.674
有限会社スリーホープ
代表取締役 山本 和志 さん(44)
飲食業一筋
昭和町の隠れ鶏もんど、沖野上町の笑ひ鶏もんど、南蔵王町の祭り鶏もんど。いずれも弊社が経営する焼鳥メインの居酒屋で、毎日自社で串刺しして手間暇かけて焼く鶏肉は、「広島赤鶏」と「広島熟成鶏」。クセのない旨みとほどよい歯応えが自慢で、塩は6種の天然塩をブレンドしたもの、タレは九州産の醤油をベースに6時間煮込んだものを、私が作っています。3店舗共通の看板メニューは月見つくね。裏メニューには、貴重な部位「こころのこり」(心臓の根元)もあります。
高校生のときにフランチャイズの居酒屋でアルバイトしたことで飲食業にハマった私は、22歳のとき、倉敷市で会社を立ち上げました。当時働いていた焼鳥居酒屋の業務委託を受けての独立でしたが、初日の売上げが余りにも低く、冷や汗をかいたことは今でも忘れません。正社員3人を抱えていたので、売上げ確保のためにランチを始め、最初の3年間はほぼ無休。わずかな時間でも幼い我が子と遊ぶのが楽しみでしたが、別れ際に「また来てね」と他人行事な挨拶をされ、切なくなったこともありました。
出会い、再会に救われ
私は2つの偶然の再会に救われました。最初の再会は創業準備をしていた最中。ある銀行の支店長から「君が頑張ることは良く知っている」と言われ、融資を楽に通してもらえたのです。その人は、バイト時代に1人で飲みに来られていたお客様でした。
次の再会は福山に戻ってから。父が亡くなり1人になった母を支えるため、2009年に帰郷した私は、同年5月に「隠れ鶏」を開店。私を信じて倉敷から越してきたスタッフとともにスタートを切りました。最初の2か月はキツかったですが、徐々に売上げが伸びて安堵しました。そんなとき、高校時代に働いていた店の社長と10数年ぶりに再会したのです。当時、未熟さ故に喧嘩別れしたままだったので無礼を詫び、積もる話を交わすうち、引退を考えていた彼の店を借金ごと引き継ぐことになりました。それが「笑ひ鶏」です。飲食業の面白さを知った場所で、自分の店を出せるとは夢にも思っていませんでした。正直言うと、福山での金策は本当に苦労しました。市外の業務委託で積み上げた実績では何の信用も得られなくて。そんな中、戻った翌年に2店舗目をスムーズに出せたのは、再会のおかげです。経営のほうも軌道に乗り、2016年に「祭り鶏」をオープンできました。
倉敷からついてきてくれたスタッフは、今や私の大切な右腕。統括マネージャーとして支えてくれています。最近は様々な業種の経営者から、自分の理解者が欲しいという声をよく聞きますが、私の場合、早くから側にいました。人に恵まれてきて今があるのだと、心から感謝しています。
得手不得手を補う
店舗を増やしたのは、障がい者雇用を増やすためでもあります。私自身、生まれつき両下肢機能障害があり歩行が困難ですが、周りの理解があって活躍の場を与えてもらい、独立もできました。その恩返しとして、同じ立場の人の雇用に繋げようと一昨年、就労支援事業「地域若者サポートステーション」からの受け入れを始めました。現在スタッフは正社員6人を含め約60人いますが、うち3人がそこからの雇用です。例えば彼らが自分の気持ちを上手く表現できなくても、数を数えられなくても、できる者が補えば前に進めます。彼らへの目配り・気配りは、お客様や全スタッフ間のコミュニケーションにもプラスをもたらし、明るく元気な店作りに生きています。
焼鳥はスーパーでも買えるのに、わざわざ食べに来てもらえるのだからお客様には笑顔で帰っていただきたいです。これからも、スタッフはお客様を笑顔にするため、私はスタッフの笑顔を守るために、できることを模索しながら頑張り続けていきます。
■ SHOP DATA
有限会社スリーホープ
広島県福山市沖野上町4-18-18
TEL:084-983-1550