新たな高血圧治療ガイドラインからみる糖尿病患者さんの血圧の目標値は?~後編~

 新たな高血圧治療ガイドライン2019(JSH2019)の発表を受けて、前編では主に、糖尿病患者さんの血圧管理について記述しました。結果的に糖尿病患者さん、蛋白尿陽性の慢性腎臓病(CKD)患者さんの降圧目標値はかわっていませんが、75歳未満の成人、75歳以上の高齢者、冠動脈疾患や一部の脳血管障害患者さんなどは、より厳格な降圧目標となりました。欧米諸国では、降圧目標を厳格にするメリットがはっきりしないことから、むしろ、降圧目標は高めに変更する傾向にあるにも関わらず、何故、本邦では、厳格にしなければならないのでしょうか。

 降圧をより厳格にすることの根底にある概念、それは、おそらく、透析導入の原因疾患として、糖尿病性腎症に迫る勢いを見せている、腎硬化症に対するリスクを意識していることだろうと考えています。これまでの、このコラムでも述べましたが、腎硬化症は、高血圧がその進展に最も寄与する疾患ですので、塩分摂取過多からくる高血圧が多い日本人では、若い頃からの降圧が腎硬化症回避には最も重要です。一方、腎硬化症に進展してしまった場合は、血圧の下げすぎは逆に腎虚血を招きますので、尿蛋白陰性のCKD患者さんの降圧目標(診察室血圧)は140/90mmHgと逆にやや緩めの設定となりました。

 現在も、外来で患者さんに“血圧の基準は年齢に90を足したぐらいでいいのでは?”と聞かれることがあります。確かに、腎硬化症は緩徐に進行するため、70歳台で寿命を終えた時代に、あまり問題とならない疾患でした。しかし、日本は世界一の平均寿命となった現在においては、80歳、90歳で腎硬化症から透析、という運命が待っている、そういう時代になったことを我々は理解しなければなりません。ですので、糖尿病のあるなしに関わらず、若い頃から、血圧は低めにしなければいけないという判断がなされたものと思われます。

渡邉内科クリニック

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