INTERVIEWEE
脳梗塞特化リハビリセンター (のうこうそくとっかりはびりせんたー)
代表 藤原 育子 さん(57)
家族の後遺症に直面
脳疾患で麻痺をはじめとする後遺症に、もっと効果の感じられるリハビリをしたいー。多くの願いにこたえて今年1月、岡山県初の脳梗塞特化リハビリセンターができた。
代表の藤原さんは、上智大学を卒業し、マッコーリー大学大学院で言語学を修めた後、現KDDI、婦人画報社に勤めたキャリアを持つ。今の業界との関わりは、備前焼作家の和さんとの結婚に始まった。義父の藤原雄さんは、人間国宝に認定された大家だが、2001年に亡くなるまで長く脳梗塞の後遺症に苦しんだという。「リハビリが今のように盛んではなく、退院後も自己流でした」。晩年は、思うように動かない手で泣きながらロクロを回していた姿を思い出すという。
義母や祖父も脳梗塞の後遺症で苦しんだそうで、セミナーや講義に参加し、医療やリハビリを学び続けた。また東京や大阪といった大都市部には、自責(保険外)のリハビリ施設があるのを知り「我が家だけでなく、この地域で求める人の力に」と考え、医師や専門家と連携して開業に至った。
新しい神経回路をつなぐ手法
100㎡の広々とした施設内には歩行レーンやマシンがあり、「促通反復療法(通称:川平法)」を中心に、マンツーマンで120分間みっちりトレーニングできる。「失った脳細胞に代わって周りの脳細胞が働くように、新しい神経回路をつなぐことに集中する手法です。指や手足などの麻痺にアプローチします。また、麻痺していない側の運動機能も30%ほど失われると言われており、機能と体幹を維持するリハビリも大事にします」。
鍼灸室では、鍼灸・超音波治療を行うほか、月1回は、夫・和さんによる備前手びねりの陶芸療法。「手指を使う動作が脳の刺激になります。土に触れる、土を叩くだけでもいいですよ」。窯で焼いて作品にもなり、リハビリならずとも通いたくなる、藤原家ならではのプログラムも喜ばれている。
人に笑顔と幸せな未来を
脳梗塞以外にも脳出血の後遺症やパーキンソン病にも対応でき、〝杖なしで歩きたい〟〝痺れから解放されたい〟といった願いに応じたメニューを組む。「指が1㎝動くだけで、できる事は劇的に増えます。例えばファスナーを押さえる、ポケットに手を入れられるなどです。後遺症で苦しんでいる方が少しでも良くなるようお手伝いしていきます」。予約すれば、個々の症状に合うかを確かめる体験もできる。
「もし義父が苦しんでいた頃、こんな施設があったら、もっと長生きできたのではないか…もっともっと活躍できたのではないか…」と思い返す藤原さん。その切なさは常に胸にあり、利用者さんに「良くなったら何がしたいですか?」と明るい未来を示しながら寄り添っている。二人の娘の母。趣味はヨガ。
INTERVIEWEE DATA
脳梗塞特化リハビリセンター(のうこうそくとっかりはびりせんたー)
岡山県岡山市北区今2-2-7
TEL:086-259-2252