新型コロナウイルスを発症した場合の死亡率は、一般的には2%程度と言われていますが、基礎疾患があると死亡率は上昇、中でも、糖尿病患者さんは、心疾患のある患者さん(10%)に次いで2番目に死亡率が高い(7%)という海外のデータがあります。
なぜ、糖尿病患者さんはこんなに重症化しやすいのでしょうか。それには「免疫能」が影響しているのです。我々が持っている免疫能は2種類あります。ひとつは「液性免疫」と呼ばれるもので、特定の病原体に対する抗体を作って戦おうとするものです。しかし、抗体は感染してから2〜3週間くらいしないと自分の体内で作れませんので、コロナの増殖の速さに追い付けず、重症化してしまいます。ワクチンは、抗体がすぐ作れるように準備する手段ですが、これも完成までに1年以上と言われています。従って、残念ながら現時点では、液性免疫は無力なのです。
一方、我々の白血球は、病原体があるとみるや、それに近づいて(遊走)、食べよう(貪食)とする能力があります。これは「細胞性免疫」と呼ばれるもうひとつの免疫能です。現在、コロナ重症化予防のために細胞性免疫を高めるBCG接種の治験が世界中で注目されているようですが、この細胞性免疫こそが重要なのです。ところが、糖尿病はこの肝心要の細胞性免疫を低下させてしまうのです。具体的には、高血糖(250~300㎎/㎗以上)になると、白血球の遊走能や貪食能が低下すると考えられますのでHbA1c7.5%未満にしておく必要があります。
この細胞性免疫を高めるには、①緑黄色野菜や果物からのビタミン摂取(南瓜や果物の過剰摂取は血糖を悪化させるので、適正量に留めましょう)、②適度な運動、③十分な睡眠が不可欠です。
従って、糖尿病患者さんに置かれましては、仮にコロナに感染しても重症化させないために、血糖の適正化は無論のこと、これらの生活習慣の改善に努めて細胞性免疫を日頃から高めておくことが大切です。これがコロナ禍を乗り切るための心構えであると言えます。