グルメ

シリーズ② 未開拓地の「辛さ」に挑戦した僕の彼女

前にも書いただろうか。
わがままで食通で、僕に言わせると
かなり食い意地が張ってる彼女のことを。

そんな彼女から久しぶりに来たオファー。
神経質な僕は、身をかまえてスマホの画面を目で追う。

ヨンカゲツマエニ 
イッタ チュウカノオミセ
マタ イキタイ。
タクサンノ
シュルイヲ
スコシズツ
タベル。
マエト
スベテ 
チガウ
メニューデ。

はぁ・・・。
宇宙人気取りかっ!!  と思うような
読みにくいカタカナ。

彼女の「絶対さ」加減がにじみ出てるな。

さて、今夜は豪勢にいこう。
彼女に「おいしい!」と言わせるために。

そうだ、今日は円卓のテーブルにしよう。
たくさんの種類をならべて、仲良く二人でつつこう。

「ますた〜、こんばんは〜。わすれられなくて
またきちゃいました」

僕には、温かみのない カタカナなのに
なんだか、マスターには ひらがなっぽい 親しさで挨拶している。

はじめの一品。なぜか、僕が緊張する。

タイラギ貝の貝柱のムース。

ふんわりとした口どけの甘さが香る味。
しそと赤胡椒のアクセントがいい。

フンフン、と彼女は食べている。
僕は一回、しかも五分の一を食べただけ。
あとは、あっという間に消えた。

すぐに二品目の前菜がきた。

鮭のディップ。
付け合せは・・・。

「にんじんを3時間かけて蒸して裏ごししたあと
カレーパウダーでシンプルに味つけています」と、マスター。

これが、にんじん?
付け合せのおいしさに、ひとり感嘆していたら

鮭のディップが、なくなっていた・・。

「二人で、食べるといいね! 苦手なのは食べてもらえるし
好きなのは、全部たべれるし♪」

・・・まじすか。

いいよ。
いいさ。
そうなると予想して、今回は事前に手は打ってあるんだ。

3品目がきた。

やばいな。
これも彼女の好物だ。

太刀魚の柑橘ソース。

オレンジの持つ甘酸っぱさが、軽く揚げてある太刀魚の
白身とからみおいしい。

「あ〜。これ好き。おいしいね」

くりくりした目で、たべる彼女を前に
もう箸は出せない。

よし!1,2,3品と大幅に譲ったんだから
次の お魚のメインは・・
「たべなさいよ、おいしいんだから(ニコッ)」と
来るに違いない。

わぉ。

ふぐだ。
香りもいい。

ふぐの漢方薬のスープ炒め。

「ちょっと、漢方の独特のくせがあるかも・・・」
マスターの説明も半分に、すでに口に運んでいる彼女。

「これ、おいしい。スープで炒めてるから?煮つけでもないし風味も味も、今日一番!!」

でました。
彼女の今日一番の キョウイチ宣言。

「食べないの?おいしいよ。ほら、銀杏もいいかんじ。
ふぐって、あたま周りも骨のまわりもおいしいよね」

って、ごろごろした身は、すでになし。
たしかにおいしい銀杏とアゴ周りの身を食べている僕。

ここからの3品も素材のこだわりと
ひとつとてかぶらないソースが絶妙だ。

太刀魚の中国味噌炒め
香味のきいた少しパンチのある味。

マコモダケと韓国白菜、ワーワー菜の野菜炒め。
スープと一緒にレンゲでたべると最高!

車海老とロマネスコのスープ炒め。

マスターは、彼女が辛いのが苦手でスープが好きで
素材の味が活きる料理が好きなのを確実に知っている。

ここまで7品。
満足そうな幸せな笑顔が目の前にある。

「今日は、僕の好きなちょっと辛い系も作ってくれるみたいなんだ」

僕の言葉に即反応する彼女。

「え?辛いの無理。」

「いや、僕がちょっと食べてみたいなって・・」

「ふ〜ん、そうなんだ・・」

なんとなく、なんとなくだけど
雰囲気が怪しくなってきた。
おかしいぞ、もう満腹で満足のはずなのに・・。

「おまたせしました!牡蠣ですが、辛し味噌炒めと 辛し香り炒めの二品です」

彼女の鼻孔がふくらんだ。
「食べてみる!」

僕の秘密兵器が・・・。
あぁああああああああぁああ。

「なにこの味! 舌に残る辛さより旨みが勝ってる。美味しい〜。
あたし、このくらいの辛さでも、食べれる人間だったんだ!うれし〜♪」

って、人間でしょ。
それに、あなたの好みを踏まえた辛さでしょ。これ。

僕のために、僕がこっそりオーダーしていた品々が
開拓された彼女の口に消えていく。

そう、このブリととうがらし煮も。

最後には、辛い系が続くからきっと食べられなかった彼女が
なにか食べたくなるだろうと思って頼んでおいた一品がきた。

地頭鶏の甘酢揚げ。

大満足の12皿。
一皿は少なめに、彼女の希望通り

タクサンノ
シュルイヲ
スコシズツ
タベル。
マエト
スベテ 
チガウ
メニューデ。

は、叶った。

そして、未開拓地の「辛さ」の旨みに
気付かせてしまった メニューの数々。

マスターの作戦勝ちだ。

でも、負けても僕はなんだかうれしい。

今度は、堂々と一緒に辛みの世界に
ふたりでいけるのだから。

中国料理 蓮華

中国料理 蓮華チュウカリョウリ レンカ

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