一般的に、脂肪肝は、良性疾患である単純性脂肪肝(NAFLD:ナッフルディー)と、炎症や線維化を伴い肝硬変や肝癌に進展する非アルコール性脂肪肝炎(NASH:ナッシュ)の2つがあります。
腹部エコーなどで、しばしば脂肪肝と診断されることはあると思いますが、基本的にはNAFLDと考えていいと思います。しかし、NAFLDのまま変化のない症例もあれば、日本人の約10人に1人くらいは、次第に悪性疾患であるNASHに移行していく症例もあると考えられています。
肝臓での酸化ストレスの蓄積がNASHに進展する原因と考えられていますが、実臨床において、どのような患者さんが、NASHに進展していくかは詳細にはわかっていません。アルコールの常習的な摂取がないにもかかわらず、(1)高インスリン血症を呈する〈空腹時10以上〉、(2)血小板が少ない〈20万未満〉、(3)ASTがALTより高い、などの検査所見があれば、疑う根拠といわれています。高インスリン血症は、インスリン抵抗性が強い糖尿病患者さんに多いわけですから、NAFLDの患者さんの中で、糖尿病の患者さんが、他の生活習慣病に比して、NASHに進展する可能性が一番高いと言われています。
以前にも述べましたが、糖尿病患者さんの死因の第1位は癌であります。その中でも肝癌こそが、糖尿病で最も増えている癌であることは、このようなNAFLDからNASHへの進展リスクが最も高い集団であることからも容易に予想がつきます。
NAFLD/NASHを予防するためには、食事療法、運動療法が最も重要でありますが、薬物治療としては、糖尿病治療薬であるチアゾリジン誘導体やGLP-1受容体作動薬、SGLT2阻害薬が、NAFLD/NASHに奏功することが、多くの臨床試験で既に証明されており、当院でもこのような薬剤を選択することで、多くの患者さんに治療効果が認められています。また病状の進行に応じて、肝臓専門医である副院長の診察も受けていただいております。