今日はどこ行く?福山市最大級のお出かけイベント件数登録!!福山市のお出かけ・イベント情報検索

 ログイン


イベントガイド

タイムカプセル鞆の浦

タイムカプセル鞆の浦
第十九回 名曲『春の海』
by 釜谷 勲 2009.10.12

 鞆の浦の風景に最もマッチするBGMは筝曲(そうきょく)『春の海』でしょう。それもその筈、この名曲の作曲者は鞆にゆかりの宮城道雄なのです。宮城道雄の祖父母の墓は鞆の南禅坊という寺にあります。父親も鞆出身なのです。

 『春の海』は大正、昭和の邦楽を代表する曲で、春ののどかな瀬戸内の音の情景が琴と尺八で合奏されます。さざなみが寄せる前奏で始まり、カモメの声、船を漕ぐ櫓(ろ)のきしむ音などがのんびりと聞こえてきます。やがて船は帆に風をはらませて、しぶきを散らして勢いよく進みます。そしてまた、もとののどかな海に舟唄が流れて曲は終わります。

 昭和5年の勅題「海辺の巌」にちなんで作曲された筝曲ですが、ドビュッシーやラヴェルなど印象派の西欧音楽に親しんでいた宮城道雄の感性は、西欧の音楽家にも刺激を与えたようで、フランスのルネ・シュメーが昭和7年、尺八のパートをヴァイオリンに編曲して、宮城道雄と合奏したレコードが残っています。

 櫓がきしむ音など今は聞きたくても聞けませんが、子どもの頃は夕凪(ゆうなぎ)の海辺でよく聞いた音の風景です。宮城道雄は目が不自由だったので、実景を見ることはなかったのですが。「子供の頃、家中がよるとさわると、鞆の言葉で鞆の話をしていたのが今でも懐かしく耳に残っている」と随筆に書いています。ともあれ、鞆の浦の懐かしく、のどかな音の情景がタイムカプセルのように、この『春の海』に込められているのです。

 私が小学校6年生の時(昭和23年)、宮城道雄の生演奏を聴いた記憶があります。祖父母の墓参りに鞆へ来られた際、小学生たちにも特別に演奏会を催してくれたのです。世界的にも高名な音楽家とは知らないまま、楽しい夏休みの1日でした。胡弓(こきゅう)でネコの鳴き声を表現されたのが奇妙に印象に残っています。

 ところで、鞆の浦は瀬戸内海国立公園の一部です。昭和6年に「国立公園法」が公布され、その第一号として瀬戸内海が雲仙、霧島と共に指定を受けたのは同9年でした。アメリカにならって日本の自然景観の保護とその活用を図ろうとする運動は、明治の末から既に始まっていましたが、昭和になってようやく具体化されたのです。

 当初は富士山や日光といった名所旧跡が対象でした。屋島などが候補に挙げられていましたが、取り残されかけていました。多島海景観のすばらしさが鷲羽山と鞆の浦で見直され、一気に第一号で指定されたのです。指定範囲は小豆島から西、鞆の浦から東でした。

 昭和十四年に瀬戸内海国立公園の切手が発行されました。鞆の港や町並み、それに仙酔島などの島々が一体となった風景の切手です。その後、瀬戸内海国立公園の指定地域も和歌山県から福岡県までの広範囲に拡張されています。しかし、当初の指定の経緯からしても鞆の浦は瀬戸内海国立公園の中心のひとつであることには変わりありません。

 国立公園の対象が当初の名所旧跡的なものから、多くの島を浮かべた海に櫓のきしみやカモメの声、漁師の舟唄などが風景として聞こえる景観に視点を変えたのに、宮城道雄の『春の海』は全くかかわっていなかったのでしょうか。


この記事をスマホで読むときは
QRコード
をバーコードリーダーで。
ブログを書いた人
ブログの記事

ママ力アップ特集

・景色のいいスポット紹介!超パノラマ特集

・ぷれこ体験レポーターインタビュー yanagi

・ぷれこ体験レポーターインタビュー さえぽん

・ぷれこWEBデザイナーインタビュー まっしゅ

・ぷれこアプリダウンロード

 
記事のバックナンバー
お店の過去記事
読み物更新順です
最新情報 人気記事ランキング
人気ランキング
  
携帯で読む
スマホで読もう!
QRコード
携帯でチェックする

折り込み広告