ぷれこweb
ぷれこサイト内検索!
Loading

Prekoトップページ > 特集コンテンツ > WEB in 1面記事 > 伝統産業の今、そして未来へ⑦ 「備後渋」
WEB in 1面記事

特集・読み物


2014.9.25

伝統産業の今、そして未来へ⑦ 「備後渋」

 日本三大柿渋とされた「備後渋」。最後の工場が操業を停止したあと、昨夏、NPO法人「ぬまくま民家を大切にする会」が、機械とノウハウを受け継いだ。新たな継承者となって丸1年。今後百年を展望しながら、備後渋を作る作業工程や柿渋の利用方法を取材した。

備後渋とは
 柿渋は、平安時代から用いられた日本伝統の自然塗料。木材や布などの防水・防虫・防腐、強化などの効果がある。なかでも「備後渋」は京都の山城、岐阜の美濃と並ぶ日本三大柿渋産地のひとつであり、特に渋が強く濃厚で一番質が良いとされてきた。
 明治以降、備後にあった多くの柿渋工場では、主として漁業に使用する漁網(木綿糸)に塗布するための柿渋を製造していた。そのため、戦後この漁網がナイロン製に変わるにつれ、最盛期には200社余りもあった「渋屋」は次々と姿を消していった。


最後の機械を継承
 伝統文化の継承・発展を願って活動するNPO法人「ぬまくま民家を大切にする会」(竹内哲郎理事長/会員70人)は長年、古民家を再生・補修する際には、備後渋にこだわり塗布してきた。また、一閑張り講座にも使用している。
 2011年春、唯一備後渋を製造していた尾道市高須町の岡田工場が既に製造を中止していると聞き、前理事長の渡邉良夫会長を中心に、備後渋を救うため立ち上がった。
 拠点である沼隈町の隣り、尾道市浦崎町の理事の自宅敷地内に新工場を設け、機械を運ぶと、岡田工場から手ほどきを受け、「備後渋 柿渋工場 NPOぬまくま民家を大切にする会」と緑の看板を工場入口の頭上に掲げた。2013年8月11日、新しい工場の操業開始となった。


今夏の柿渋製造
 柿渋作りは、8月から9月半ば。使う青柿は、自然栽培か放置栽培のものが理想的で、未熟果の収穫後48時間以内に皮や種ごと砕いて絞る。比重を見て水の量を調整し、約3年発酵・熟成させるが、昨年製造した柿渋を使用してみて、3年に満たなくても十分に染まることを確認した。
 また今年は、渋柿のある場所を調べて直接収穫したり、1㎏70円で買取ったりして積極的に集め、その量は約7tになった。ほぼ同量の備後渋になる。
 さらに柿渋収穫体験イベントを、8月と9月に計2回、ツネイシみらい財団の支援も受けて実施した。


柿渋染めと一閑張り
 柿渋を利用した作品づくりの講座(柿渋染めと一閑張り)が、沼隈町草深の古民家を拠点に開かれている。
 会員の黒木香苗さんが教えてくれ、毎月第1・2・4土曜日10時または13時からで相談(初回2時間程)。完全予約制。費用は500円からで作品によって違う。今年は「瀬戸内しまのわ2014」のイベントとして、遠方からの体験もあり、広がりを見せている。


課題克服と百年計画
 「これから100年続く伝統産業にしたい」と展望する会にとって、数が減ってしまった原料の渋柿確保が一番の課題。現在、柿の苗木100本を育成し、柿の木畑の用意をすすめている。
 柿渋は古来より、民間治療薬としても利用されており、発酵した臭いはとても強く、飲みにくいのは間違いないが、今も健康のために飲用する人もいる。昨年、広大大学院の教授らの研究から柿渋にノロウイルスや感染症の殺菌力があることが検証されたという。
 こうしたことから、渡邉会長は「文化遺産としての柿渋を大切にするばかりでなく、内服、外用、感染症の特効薬ともなるかもしれない。天然素材で人にも地球にもやさしい柿渋を広げたい」と新たな用途にも期待を寄せている。
 またそのため会では、「まずは染め物が趣味の人や家造りの業者の方に使ってもらえたら。渋柿を植えて育ててくれる人も募りたい」と呼びかけている。

ぬまくま民家を大切にする会
事務局  ☎084-987-0840(河野さん)
柿渋工場 ☎090-6412-4970(檀上さん)
一閑張り・柿渋染め教室 ※午前中
     ☎080-9653-5841(黒木さん)